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性行為感染症

性行為の際に人から人へ移る微生物による感染症です。
この場合に微生物にはわかっているものだけで細菌・真菌・寄生虫・ウイルスが含まれます。
基本的に妊娠を希望する場合以外はコンドームを使用することで感染の確率を大幅に下げることが可能ですが、確率をゼロにすることはできません。
また感染する部位は陰茎や陰嚢、膣やその周囲とは限りません。
オーラルセックスによって喉の奥に病原体が感染することも稀ではなくなっています。
感染の媒介になるものは精液や分泌液だけでなく唾液なども感染源になります。

必ずしも自覚できるような感染ばかりではないため、知らないまま他人に移してしまうことも多いでしょう。
ややこしいことに感染からの経過時間によっては検査をしてもひっかからない場合もあります。
適切な時期を選ばなければ検査も万能ではないのです。

結論じみたことを最初に言ってしまえば、性行為感染症にかかりたくなければ、

  1. よく知らない相手とはしない
  2. 多数の人間としない
  3. 基本的にコンドームを使用する

ということを守っていただきたいと思います。

そして感染してしまったら必ずパートナーとともに治療を受けることを忘れないでください。
一度感染したら二度と感染しないという病気ではないので一緒に治療しない限りいつまで経ってもうつしあって治らないということになります。

下に述べる1~5の感染症は全て5類感染症であり定点観測の対象です。

各論

1. クラミジア

日本で最も多い性行為感染症の病原体で、男性の尿道炎・前立腺炎・精巣上体炎、女性の膀胱炎・膣炎を起こします。
自覚症状は比較的軽いものが多く、尿道・膣からの透明~白色の分泌物流出と尿道・会陰のかゆみを起こしますが、自覚症状がないまま保有者になっていることも多く、妊婦の20~30人に1人が保有者と言う報告もあります。
潜伏期間は長ければ2~3週間に及ぶため、自覚する前に人にうつす可能性があります。

診断は抗原検査もしくは遺伝子増幅検査で行われます。
適切な抗菌剤を選べば耐性はないので完治しうるのですが、永久的な免疫ができるわけではないので再感染します。
そのため感染の可能性のあるパートナーと同時に治療を行わないと互いにうつしあっていつまでも感染が解除されないというピンポン感染をおこします。

2. 淋菌

クラミジアとともに男性の尿道炎・女性の膣炎を起こす代表的な細菌です。
抗菌剤耐性の歴史は淋菌とともにありと言われるほど多数の薬剤が効かなくなっています。
潜伏期間は1週間以内が多く、症状はクラミジアと同じ局所症状が中心で尿道あるいは膣から黄色の排膿を起こします。
痛みも強いのですが、女性は男性に比べると症状が軽いことが多いとされています。

診断は尿あるいは膿の培養検査で行いますが、同時に抗菌剤に対する感受性試験が必要です。
治療としては内服の抗菌剤は耐性になっているものが多いため、スペクチノマイシンの筋肉内注射、あるいはセフトリアキソンナトリウムの点滴が勧められています。

3. 梅毒

感染後に症状が出たり消えたりを繰り返すという嫌な特徴を持つ感染症で、粘膜の接触で感染するほか、出産時に感染してしまう先天梅毒という経路も知られています。

典型的な症状としては感染後3~6週間の潜伏期を経て陰茎や包皮の部分に硬くて赤みを帯びた膨らみや潰瘍をつくります。
放置すると消えていくのですが、感染から4~12週間ののちに全身に赤みを帯びた皮膚の小さな変化が多発するようになります。
ときに発熱や倦怠感など様々な症状と伴うことがありますが、厄介なことにこれも自然に消えてしまいます。
放置していると1/3くらいの確率で数年から10数年の長い潜伏期間の後に神経梅毒・心血管梅毒と呼ばれる全身性の変化をおこし、ときに進行性の麻痺や骨の破壊に至るので(晩期梅毒と呼ばれます)、感染したかなと思ったら医療機関を受診してください。

診断は細菌を培養する安定的な方法が無いので体が起こす反応で確認します(抗トレポネーマ抗体検査と抗カルジオリピン抗体検査)。
両者が陽性になると活動性の梅毒と診断されます。

治療はペニシリン製剤の内服ですが、病気の進行度によって投与期間が変わります。

4. 尖形コンジローム

ヒトパピローマウィルスによって発生する性行為感染症です。
陰部に鶏冠状あるいはカリフラワー状のやや赤みを帯びた腫瘍を形成します。
基本は良性であり、1/5~1/3は自然に消えていくとされています。
潜伏期間、というか感染後腫瘍を形成するまでに数週~3ヶ月程度かかると言われています。

基本的には形態の変化以外の症状がないため、特に女性ではなかなか気づかないことがあるので要注意です。
ときに尿道・膣・肛門の中にまで腫瘍を形成することがあるので、気づいた場合はしっかりと診察を受けてください。

診断は基本的には見た目だけでつきますが、上述のウイルスのタイプまで調べたければPCR検査で判定できます。

治療ですがごく早期のものであれば塗布剤で改善が期待できますが、ある程度育ってしまうとレーザー・液体窒素・電気メスなどで治療する必要があります。
完全にウィルスを体内から除去できる方法が確立されていないので、治療後3ヶ月程度(新たに腫瘍ができるのに必要な時間)は経過をよく見たほうが良いでしょう。

5. 性器ヘルペス

多くの方は口の周りに白い小さなおできができて触ると痛いという経験があるのではないでしょうか?
子供の頃からよく見られる症状で、大人になって体調が悪くなると繰り返し出てくる厄介者ですが、これを引き起こすウィルスが単純ヘルペスウィルスです。

このウィルスが性行為によって性器に感染したものが性器ヘルペスですが、こまったことに一旦症状が治まってもウィルス自体は神経の奥底に潜んで残っているので体調が落ちて抵抗力が減ると症状がぶり返すのです。これは抗ウィルス薬によって治療をしたとしても同様です。
さらにややこしいのが感染しても自覚症状が出ないまま人に移すことがあるので、見つかっていない感染者が多いと言われています。
自覚症状が軽いなら問題ないのでは?と考えたくなりますが、出産の際に親から子にうつると新生児ヘルペスとして重篤な症状を起こすことがあるので要注意です。
初回感染が最も症状が強く出る傾向にあります。

潜伏期間は2日~3週間程度で局所の不快感から始まり、発熱・倦怠感・リンパ節が腫れてくるといった全身症状が出ると共に、局所にも強い痛みを持つ小さな白いおできや潰瘍ができます。
自然治癒もありうるのですが症状が強い場合抗ウィルス剤による治療が必要です。

診断は病変部の細胞を綿棒などで拭い取ってウィルスを検出します。

6. 肝炎やエイズなど

これらも性行為でうつっていく感染症ではあるのですが、泌尿器系に自覚症状を発症することがまずないため、当科で診断することはあっても治療することはありません。
ぜひ専門施設での診療をお受けください。

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