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尿路結石症

生涯で男性は七人に一人が、女性は十三人に一人が罹患すると言われる病気です。
体質と環境がどちらも強く影響することが知られており、予防の重要性がはっきりしている病気でもあります。
発症年齢のピークは男性が50歳代、女性が60歳代ですが、ご家族に患者さんがおられると発症年齢が20歳若くなると言われています。

尿路結石は90%以上が腎臓でできた尿を集めて流し出す腎盂・腎杯で発生すると言われています。
結石は細菌の死骸などのまわりに、おしっこの中に溶けきれなくなった老廃物が析出(水溶液の中にとけている物質が液体と固体の境界面でとけきれなくなって固体の表面に張り付いてくる現象で濃度に依存しておきやすくなる)してくることによって結石が大きくなっていきます。

腎盂は比較的大きなスペースがあり、結石が発生してもすぐ痛みを感じるとは限らないのですが、そこからおしっこを膀胱まで運ぶ尿管は内腔が細い上に、腸と同じ動き(蠕動運動と言って縮んだり緩んだりして中のものを送り出す動き)をしているため、石が縮んでいる部分にはまり込んでしまうと痙攣がおきてしまい、全くおしっこが通らなくなってしまいます。
おしっこは作り続けられるので結石のあるところよりも腎臓側にどんどん溜まっていき、腎盂や尿管の壁が押し広げられると強い痛みを感じます。
痙攣はいつまでも続くわけではなく自然に解除されるため、尿管結石の痛みは出たり治まったりを繰り返すのです。

症状

結石といえば痛みというイメージがありませんか?
別に間違ってはいないのですが、実は結石持ちの方で痛みを感じておられる方は7割程度と言われています。
上述のように結石が痛みを起こすのはおしっこの流れを途絶えさせるため、であればおしっこの通り道より結石のサイズが小さければ痛みは起きないことになります。
痛みがないから結石ではない、とは言い切れないのです。

血尿もよく見られる症状です。
目に見えて真っ赤なおしっこが出ることもあれば、検査してみて初めて指摘されるレベルまで様々です。

結石そのものでは出ないのですが、発熱を伴っていると腎盂腎炎の合併が疑われます。
流れの悪いところに感染が起きると発生した膿の行き場がなくなるため抗菌剤が効きづらいことが多く、ときに排膿のための処置(内視鏡を使って尿管に細いチューブを通す、あるいは腎臓付近の皮膚から針を刺して腎盂にチューブを入れる)が必要になることもあります。

診断

自覚症状と尿検査所見で疑いを持ったら画像検査で診断をつけます。画像検査は超音波検査・腹部レントゲン撮影・CT撮影が行われますが、

  1. 超音波検査(エコー)は放射線を使用しないので妊婦さんでも受けることができる安全性の高い検査です。
    腎臓及び膀胱の結石を発見するのに適していますが、途中の尿管の結石は見ることは難しいです。
    尿の流れが滞っているのを見ることができるので、疼痛の原因が結石によるものなのかを推測するには便利です。
  2. 尿路結石の9割はカルシウムを含むので腹部レントゲン撮影も有効です。
    サイズの評価も簡単で放射線被曝量も次のCTに比べれば少ないため結石の移動を繰り返し評価するのに向いています。
    ただ解像度があまり高くないため小さい石は見つけにくい・骨と同じ成分なので骨に重なると見えにくい・カルシウムを含まない結石は見つからないという弱点があるため結石を正しく診断できる率がCTに比べると劣ってしまいます。
  3. CTは結石の診断における絶対的な切り札です。
    最近では横方向の断面図だけではなく、いろいろな方向からの再構成画像が作成できたり、おしっこの通り道の情報だけを取り出して画像を作ったりすることもできるようになったため、1mm程度のサイズがあればほぼ100%結石を正しく診断できます。
    被曝量が比較的多めなのであまり短期間に頻回に繰り返すのはためらわれますが、数回程度であれば体への影響はありません。

治療

カルシウムを含んでいる尿路結石は溶かして出すことができません。
小さければおしっこの圧力でそのまま排出するか、大きくて出せないようなら割って出すかしか方法がありません。
痛みがあるのだからさっさと割ってくれ!とよく言われるのですが、割ってしまうと破片がどうしても残り、そこから新たに石ができてしまい再発率が高くなるという欠点があります。
そのためある程度痛みを堪えることができるには水をたくさん飲んで自力で出せないか粘っていただいています。

管の痙攣を抑える薬剤や結石の排石を促す薬剤と呼ばれるものはあるのですが、大規模なランダム化比較試験で効果が証明されたわけではありません。
運動に関しては尿量を増やす効果はありますが、直接的な排石効果はありませんのでむりになわ跳びを飛んだりする必要はありません。

結石の破砕方法はサイズと引っかかっている場所によって3通りに分かれます。

①経尿道的切石術(TULもしくはf-TULといいます)

内視鏡を尿道に挿入し、膀胱や腎盂・尿管内の結石を直視しながらレーザーを用いて破壊するという方法です。
破砕効果が高く尿管であれば2cm程度までなら1回の施術で排石できるとされています。
ただ、内視鏡を使用するため、麻酔をかける必要があり入院しなければなりません。
また細い尿管の中でレーザー照射による結石の破砕を行うためどうしても尿管に傷がつくのは避けられません。
しばらくの間血尿が続き、尿管保護のためにしばらく尿管に細いチューブを留置することがあります。

おしっこの通り道を逆行するため感染(腎盂腎炎)が起きる可能性があり抗菌剤の使用が勧められます。
現在の結石破砕の主流となる方法です。

②体外衝撃波結石破砕術(ESWLといいます)

体の外から衝撃波を繰り返し照射して結石を破砕する方法です。
麻酔の必要がなく、外来で施術する施設もあります。
ただ、結石を狙う方法がレントゲンもしくは超音波でありTULのような直視下ではないこと、レーザーに比べると衝撃波の破砕効果が弱いことから1cm以上の結石には向いていません。尿管の中で小爆発を起こすようなものなのでやはり尿管が傷つくことは避けられませんがTULほど強力ではないため合併症の発症率は低めになっています。

③経皮的切石術(PNLといいます)

レントゲンで観察しながら腎臓付近の皮膚から腎盂へ穴をあけて内視鏡を通し、そこからレーザー発射装置をいれて結石を破砕する方法で、最も体へのダメージが大きい治療法です。
2cmを超えるような腎結石が対象となります。
施行する施設も他の2者に比べると限られています。

予防

とにかくまず水を飲むことです。
ランダム化比較試験によりおしっこの量を1日2リットル以上にするように水を飲むだけで飲まない人たちと比べて1年後の再発率が10%以上低下することがわかっています。

日本人の尿路結石の8割はシュウ酸カルシウムという成分でできています。
緑茶・紅茶・烏龍茶・コーヒー・ビールなどにはシュウ酸が多く含まれているので、2L以上のおしっこを確保するために増やす飲み物としてこれらのものはふさわしくありません(普段飲んでおられるものはよほどたくさん飲んでいなければそのままでも良いと思いますが)。
できるだけ真水か麦茶(シュウ酸が入っていません)を飲んでいただければと思います。

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