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排尿蓄尿障害

おしっこは

  1. 膀胱に尿を十分に貯留(蓄尿)でき、尿意を感じることができ、しかるべき場所(トイレ)へ移動するまで排尿を我慢することができる。
  2. 便器や着衣の用意をしてから、本人の意思によって途切れることなく排尿できる。
  3. 尿は残ることなく排出され、不快感がない。

こうした動作を覚醒中には数回、睡眠中には0〜1回行う

のが正常な姿です。

これらの動作のどこか不具合が生じた状態を排尿蓄尿障害と言います。医学的には最近は下部尿路症状(Lower Urinary Tract Symptom: LUTSと呼ばれている症状です。

どんな症状?

排尿蓄尿障害に分類される様々な症状についてその出現頻度を調べてみると、排尿障害ではおしっこの勢いが弱い、おしっこをする時お腹に力を入れて出そうとしてしまう、おしっこをした後なのにまだ残っている感じがするという症状が多く見られることがわかりました。子供の頃とばしっこしたような勢いがない、なかなか出てこないけれどお腹に力を入れたらちょっと勢いが出た・・・。40~50歳以降の男性であれば多かれ少なかれ感じておられるのではないでしょうか?

蓄尿障害ではやはり起きて活動している間だけではなく寝ている間におしっこにいく回数の多さが挙げられましたが、それ以外にも我慢できないくらいおしっこに行きたくなる(切迫感)、我慢できずにもれてしまう(切迫性尿失禁)のような我慢のしにくさも発生頻度の高い症状でした。また主に女性に多く見られるお腹に力が入ると漏れてしまうといった症状も多くの方が経験されているということがわかりました。

実はLUTSにはこれ以外にも③のなかに含まれている「不快感がない」に引っかかる症状が含まれています。下腹部(膀胱の辺り)もしくは尿道の痛み・不快感という症状もまた頻度が高いという結果が得られました。

これらの症状は単独で発生することの方が珍しく、大部分の方はいくつもの症状を併せ持っておられます。診察の際にはまず他の項目でおはなししたCLSS質問票などのスクリーニングツールを用いて漏れのないように聴取する必要があります。

ですがこれらの症状が出たらすぐに治療を始めなければならない、というわけではありません。なぜならこれらの症状には自然な加齢による変化という側面があるからです。だれだって(嬉しくはないと思いますが)白毛が生えてくる、シワができてきます。でも白毛が生えた人が皆それを染めるか、といったら違いますよね?シワに至っては注射をすることでシワを目立ちにくくするという技があるのですが、それなりにリスクもある方法です。この記事を読んだからといって明日にでも注射をしに行こう!と思いますか?

排尿蓄尿障害もこれらと一緒です。基本的には困ったら治療をするというスタンスで良いと思います。おしっこが出にくくて公衆トイレで後ろに人の列ができるのがイヤとか、おしっこの回数が多くて我慢ができないので怖くて電車やバスに乗れないとか、そこまでいかなくても夜何回もトイレで起きてしまうのでよく眠れなくなってしまったとか。こういう場合は是非とも診察を受けに来ていただきたいと思います。

ただ、前の文章でなぜ「基本的には」なんて但し書きをしたかというと、困るほどに自覚症状が出てくる前に病状が悪化しているということが稀にあるからです。これは元になる病気の種類がたくさんあるためで、例えば膀胱の筋肉をうまく動かせなくなる神経因性膀胱という病気では膀胱の感覚まで調子が悪くなってしまうので尿意がうまく感じられずおしっこの出し残しがとんでもない量になってから見つかるなんてこともあるのです。

正確にお話しすれば、ちょっとでもおしっこに関する症状を感じたらまずは泌尿器科に相談に来てください。おしっこを調べたり超音波で膀胱や(男性では)前立腺、必要であれば腎臓をチェックして、何もしないことですぐに状況が悪化するようなことがなさそうだと判断されれば半年とか1年ごとに経過を見させていただくだけで薬を飲んだりとか手術をしたりする必要はありません。放置すると臓器の機能が悪化しそうだとか、あるいはがんがこういった症状を起こすこともあるのでその場合には早期に治療を開始します。

原因

  • 加齢現象:膀胱が硬くる、前立腺肥大、寝ている間のおしっこの産生量が増える
  • 神経の問題:脳梗塞、脳出血、パーキンソン病、認知症、脊椎損傷、脊柱管狭窄症など
  • 炎症:膀胱炎、前立腺炎、尿道炎
  • 腫瘍:膀胱がん、前立腺がん、そのほか骨盤内の他の臓器のがんも進行すると排尿蓄尿障害を起こします。
  • 尿の量に異常を起こす病気:糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸症候群、尿崩症など

治療

原因によって選択される方法は変わりますが大きく分けると

  • 生活指導
  • 薬物治療
  • 行動療法
  • 手術

に分けられます。

生活指導はたとえば寝る前の水分摂取量を少なめにするとか(脱水にならない程度に、ですが)、カフェイン(コーヒー、紅茶、緑茶、烏龍茶、エナジードリンクなどにたくさん含まれています)やカプサイシン(とうがらしに含まれています)はなるべく避けるようにするなど日常生活で気を付けていただくというものです。これだけでも症状が良くなることがあるのですが、なかなか継続することが難しいというのが難点です。ゆったりしたお茶の時間なんてものも人生には大事ですしね。

薬物療法は排尿蓄尿障害のメインと言えます。おしっこを我慢する機能をサポートする薬には主に抗コリン剤やβ3作動剤とよばれる薬が処方されます。薬にもなれば毒にもなるという言葉があるように、薬には副作用が出る可能性があります。おしっこを我慢する機能をあまりにも強化すると、おしっこが出しにくくなることがあるので、この薬剤を使用しているかたは定期的に超音波などによる残尿のチェックをお勧めしています。

おしっこを出す機能をサポートする薬にはα1阻害剤やPDE5阻害剤などが使用されます。系統の違う薬剤としてDHT5α還元酵素阻害剤があり、これは肥大した前立腺を何割か小さくする機能があるとされています。それぞれ作用するメカニズムが違うので単独使用だけでなく併用されることも多い薬剤です。

このほかに刺激症状を和らげることを目的に様々な漢方薬や植物製剤が投与されます。

薬物療法の効果が十分でない場合には、自分自身で尿道にやわらかい管を入れることで膀胱に溜まっている残尿を強制的に排出する「自己導尿」という方法があります。男性の場合には入口(出口?)はわかりやすいのですが、尿道が長いため入れるときに不快感を感じることが多いです。女性の場合は尿道が短いためあまり不快感は強くないのですが、入り口が分かりにくいという難点があります。自己導尿はクリニックでの指導を受けた上で行なっていただきます。とくに膀胱の機能障害でおしっこが出せなくなっている方に効果的です。

薬剤抵抗性の前立腺肥大症に対しては手術療法が行われます。手術は前立腺を①やき縮める②削る③くり抜く方法があります。①は体への負担は少ないのですが効果の持続性が他の二者に比べてやや短い傾向があります。②は50年以上行われてきた方法で最も実績があり手慣れている術者が多い方法でもあります。前立腺は血の気の多い臓器なのでやや出血量が増えやすいのが注意点です。③は20年ほど前から行われるようになった方法であまりに大きすぎる前立腺には難しいのですが、②が5~10年程度の期間で残存前立腺組織が再び肥大しやすいのに対し③は比較的再増大が少ない傾向が見られます。その時の体力や併存疾患などを考慮して方法が決定されます。

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