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結節性硬化症

いきなり聞いたこともない病気の名前が混ざっているように思われた方も多いと思いますが、この病気は泌尿器科の病気というよりは全身さまざまな臓器に変化が起きてしまうという遺伝性の病気です。
私(院長)はこのクリニックを開設する前、横浜市立大学附属病院で遺伝性の腫瘍を専門としており、そのひとつがこの病気です。
多くの成人診療科がタッグを組み、発見してくれた小児科から引き継いでいく必要のある病気です。

複数の診療科が集まって診療カンファランスを結成し、患者さんたちにここにくればまとまった治療が受けられることをお知らせするためにウェブサイトを作成したのですが、諸事情により維持することができませんでした。
そこで当クリニックのページの中にその当時作成した内容をおいておこうと思います。
ここから探して入るということも難しいとは思いますが、少しでも人の目に触れる機会を増やしたいと思いますので、もしこのページを見られた方で周りにこの病気の患者さんがおられましたらお伝えいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

結節性硬化症について

1. 生まれる前~乳幼児期に起こること

結節性硬化症の患者さんは(1)生まれる前に行われる超音波検査による心臓腫瘍の診断、(2)乳幼児期のてんかん(独特の発作をおこす点頭てんかん)によって小児科の先生が疑いをもつところから診断が始まります。
脳のMRIを行うと、皮質結節と呼ばれる変化が見えてきます。
この変化が結節性硬化症の名前の由来となる病変で、てんかんの発生と深く関わりがあります。

これ以外にも上衣下結節と呼ばれる良性腫瘍や、時には上衣下巨細胞性星細胞腫と呼ばれる大きな腫瘍が発生してきます。
特に上衣下巨細胞性星細胞腫は脳の周りを巡回している液体の流れを邪魔することで脳を圧迫し、水頭症及び頭蓋内圧亢進と呼ばれる強い頭痛や吐き気を伴う症状を起こしてしまうことがあります。
これらの病変は発育に大きな影を落としてしまうことがあります。

早ければ出生時から白く抜けたような部分が全身に見られます(白斑)。

2. 小児期~思春期に起こること

3歳ごろから腎臓に血管筋脂肪腫と呼ばれる良性の腫瘍が多数できます。
年齢とともに大きくなることが多く、4cmを越えると自然破裂による出血で命に関わることもあります。

2~3歳ごろから顔面、特に鼻の周りに赤くプリプリとした小さなおできが目立ち始めます(顔面血管繊維腫)。
思春が近づくと、シャグリンパッチと呼ばれる背の低いシワの様な変化が全身的のあちこちに見られることがあります。

その他には目の中に良性腫瘍ができることがあります(網膜過誤腫)。
通常視力への影響はないと言われていますが、大きくなると出血や網膜剥離の原因となることがあるため、注意が必要です。

3. 思春期以降に起こること

20歳を越えた頃から特に女性の患者さんに肺の病変が出現してきます。
中でも肺リンパ脈管筋腫症と呼ばれる変化は初期には無症状ですが、進行する性質があり、動いた時の息苦しさ・気胸と呼ばれる肺に空いた穴の様な変化とそれに伴う痛み・咳や血痰などの症状を起こして、 最後には呼吸不全と呼ばれる状態になり命に関わる疾患です。

爪の根元に赤みを帯びたやや硬めのおできができることがあります (爪囲線維腫)。
肝臓や脾臓、子宮、大腸などに過誤腫ができることがあります。女性に多いことが知られていますが、いずれも自覚症状は無く治療を必要としない場合が多いとされています。

子宮に平滑筋腫という良性腫瘍が、卵巣には嚢胞が発生するとされています。

画像検査で骨に変化が見られることがありますが(骨嚢胞など)、通常は治療を必要としません。

4. 多種多様な病変と生涯にわたる発症

上で述べた様な病変が全ての患者さんに起こるわけではありません。
50歳を越えてからいつまでもニキビが消えないということで皮膚科に行ったことで診断される様な症状の軽い方もおられれば、発育への影響が大きく重症心身障害者施設で過ごす方もおられます。

この病気の診断や治療が一段と難しくなるのは小児科への通院が終了する年齢になってからです。
小児科は全ての病変を一括して診療しますが、成人の診療科は臓器別になってしまうため、結節性硬化症に伴う様々な病気が見逃されてしまうということが問題になっています。

この問題に対し、全国で結節性硬化症に多数の診療科がチームを組んで診療に当たるという動きが出てきました。
これらは結節性硬化症カンファランスや結節性硬化症ボードあるいは結節性硬化症診療チームなどと呼ばれており、全国の主に大学病院を中心に、単一あるいは複数の施設の協力で作り上げられています。

診療科のご案内

結節性硬化症の診療にどんな診療科が関わっているのかを紹介します。

小児科

取り扱う病気 出生前~小児期に発症する全ての病変

小児科では、神経・腎臓・循環器の各専門医が診察にあたります。
また必要な患者様には、サブリルやアフィニトールによる専門的な治療に関しましてもご相談に応じます。
15際以下の患者様は、まずは市民総合医療センターの小児総合医療センターにお問い合わせください。

神経内科

取り扱う病気 てんかん・TANDなど

脳の病変に伴って発生するてんかん、そしてTAND(結節性硬化症関連神経精神障害)と呼ばれる社会行動的・認知的・神経精神的症状は日常生活に重大な支障を招くばかりか生命のリスクをも発生させます。
様々な治療薬が開発されており、症状を抑えることで生活の質を上げていきます。

脳神経外科

取り扱う病気 皮質結節・上衣下結節・上衣下巨細胞性星細胞腫など

結節星硬化症では脳に様々な大きさ・形の病変が発生します。皮質結節・上衣下結節・上衣下巨細胞性星細胞腫と呼ばれる病変は、後述のてんかんの原因になります。
これらの病変に伴い、頭の中の圧力が上がって様々な病状が発生することがあり、その場合には手術が必要になることがあります。

精神科

取り扱う病気 てんかん・TANDなど

小児の患者さんについては自閉症を併せ持つ方が多いため、小児精神神経科の介入が必要となります。
また成人でもてんかん発作が続いている方には神経内科・脳神経外科とともに精神科でのフォローが必要になることがあります。

皮膚科

取り扱う病気 顔面血管繊維腫・白斑・シャグリンパッチ・爪繊維腫など

顔の中心部、鼻の周りにこの病気の特徴とも言える血管繊維腫という病変が発生します。
程度は人によりバラバラで、気がついていないような人もいます。
その他皮膚の色が抜けている(白斑)・痛くないけれど皮膚が隆起している(シャグリンパッチ)・爪の根元のおでき(爪繊維腫)などが発生します。

眼科

取り扱う病気 網膜繊維腫など

網膜という目に入ってきた光を受け取る部分に良性腫瘍ができることがあります。
多くの場合、視力の低下は起こしにくいと言われています。
点頭てんかんの治療に使う薬剤(ヴィガバトリン)には網膜への副作用があることが知られているため、定期的なチェックが必要です。

口腔外科

取り扱う病気 歯肉繊維腫・エナメル小窩など

口の中にも病変がでることがあります。
歯肉の部分に繊維腫と言われる硬い良性腫瘍ができたり、歯のエナメル質が原因なしに欠けてしまったりする状態(エナメル小窩)と呼ばれる状態を起こすことがあります。

呼吸器内科

取り扱う病気 MMPH・LAMなど

結節性硬化症の肺病変はLAM(肺リンパ脈管筋腫症)とMMPH(多発性小結節性胚細胞過形成)に分類されます。
日本では結節性硬化症患者さんの26~40%に肺LAMが認められ、とりわけ妊娠可能な年齢の女性に好発します。
肺LAMは、40歳以上の結節性硬化症患者さんの主な死亡原因の一つです。
肺LAMは初期には通常無症状ですが、LAM細胞の増殖に伴って労作性呼吸困難や気胸が経年的に悪化し、最悪死に至る場合もあります。

肺LAMの治療は労作時の呼吸困難の有無、気胸の有無にもとづいて決定されますが、現時点では肺LAMの進行を確実に防止できる有効な治療法はなく、呼吸器内科専門医による慎重な管理が望ましいとされています。

循環器科

取り扱う病気 心臓横紋筋腫など

生まれる前から結節性硬化症の可能性を疑うことができる唯一の所見として心臓に腫瘍を認めることがあります。
出生後に自然に縮小することもありますが、心臓の機能が邪魔されて命に関わることもあります。

泌尿器科

取り扱う病気 腎血管筋脂肪腫・腎細胞癌など

腎臓には嚢胞(体液の貯留)・血管筋脂肪腫(良性の腫瘍)が多発し、稀にですが腎細胞癌を合併することがあります。
血管筋脂肪腫は大きさや内部の血管のもろさによって破裂することがあり、生命のリスクに直結します。
治療は手術や塞栓術(流れ込む血液を遮断して腫瘍が大きくなるのを防ぐ方法)が行われます。

産婦人科

取り扱う病気 子宮平滑筋腫・卵巣嚢腫など

子宮平滑筋腫や卵巣嚢腫の合併が多いことが知られています。
また結節性硬化症による上衣下巨細胞性星細胞腫や肺LAM、腎臓の血管筋脂肪腫に対する治療薬であるmTOR阻害剤の副作用として生理周期が不安定になる可能性があります。

放射線科

取り扱う内容 画像診断・塞栓術など

放射線科とはCTやMRI、PETなどの画像診断を専門とする科です。
患者さんを直接診察することは通常ありませんが、主治医の先生が依頼した画像検査の診断報告書を作成することによって、医療の質を陰から支えています。

遺伝子診療科

取り扱う内容 遺伝カウンセリング

結節性硬化症の方には原因とされる2つの遺伝子のどちらかに違いが見つかることが知られています。
"私の遺伝子はどうなっているの?"、"どうして?"、"なぜ私に?"、"家族はどうなの?"、"どう伝えたらいいの?"など様々な悩みや疑問をお持ちになるかもしれません。
遺伝に関する専門医や遺伝カウンセラーが正しい最新の情報をゆっくりとわかりやすくお話しいたします。
また、日頃の診療では聴きづらい内容にも時間をかけて対応いたします。
患者さんだけでなくご家族のご相談にも応じます。
ご相談の内容は厳重に秘匿されますので、お気軽におっしゃってください。

受診方法のご案内

小児の患者さんは、今までのかかりつけの先生にこれまでに受けられた検査の結果と経過を記載した紹介状を描いてもらった上で、横浜市立大学附属市民総合医療センター・小児科にメールでご相談ください。

15歳以上の患者さんは、同様にかかりつけの先生にこれまでに受けられた検査の結果と経過を記載した紹介状を描いてもらった上で、午前10時半までに横浜市立大学附属病院・泌尿器科を受診して下さい。(水曜日を除く月~金曜日)

泌尿器科の疾患がない場合でも15歳以上の患者さんについては泌尿器科医師が窓口となって必要な診療科の受診の手はずを整えます。

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