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おしっこが出しにくい

泌尿器科に来られる男性に伺うと大半の方から帰ってくる台詞です。日本語はある意味便利な言葉なので「出しにくい」という言葉にさまざまな意味を込めることができます。ですが診断をつけるにはいろいろな意味にとれる言葉というものは扱いにくいので、どんな悩みを抱えておられるのかを明確に区別する必要があります。

おしっこが出しにくいという言葉には

  1. 便器の前に立って、あるいは便器に座ってさあおしっこを出そうとした時なかなか出てこないもどかしさ
  2. おしっこが出てきたが勢いが弱い
  3. おしっこが途切れ途切れに出てくる
  4. おしっこのきれが悪くいつまでたっても終わらない
  5. 出し終わった後なのにまだ残っている感じ(残尿感)がする

こういった症状が含まれているのです。このページをご覧になっているあなたに当てはまる症状はありますか?

原因

これらの症状は男性に多く見られますが、もちろん女性にも起こりうる問題です。

  • 男女共に膀胱の機能が衰えることでおしっこをうまく出せなくなる神経因性膀胱という病気を起こします。病気と書きましたがしばしばいつから起きてきたかという明確なスタート地点がなく、年配の方に多く見られる症状であることから加齢の病的な側面と考えることもできます。白くなった髪の毛が黒々とした髪に戻ることが無いように、加齢によって生じた膀胱の機能障害はなかなか回復しません。それ以上悪化させないことを目標として治療が進められます。
  • 男性においてこの症状を起こす最大の原因は前立腺という臓器にあります。前立腺とは精液の一部を作る臓器で膀胱と尿道括約筋の間で尿道を取り囲むように存在しています。精液の一部を作るのですから通常加齢と共に使用頻度は減るので萎縮しそうと思うのですが、なぜか男性の約半数で逆にサイズアップしてきます。理由はいろいろ考えられていますがはっきりしたことはわかっていません。確率と年齢依存な点から考えるとこれもまた病気であるとも加齢現象であるとも言える変化です。

大きくなった前立腺は

  1. 膀胱を圧迫することでおしっこを出すための膀胱の筋肉の収縮を邪魔します。
  2. 尿道を圧迫することでおしっこの勢いを悪くします。
  3. 尿道括約筋を圧迫することで締まりを悪くします。

いずれも上に挙げた「出しにくい」という症状につながっています。

出しにくいという症状の中に残尿感がありましたが、もしも尿が残っているという感覚の異常だけではなく、実際に出し残しの尿が増えてきてしまった場合は問題が深刻になります。

膀胱は薄い筋肉の袋です。筋肉は緊張を保つと疲労が溜まるので時々休めてあげることが必要です。皆さんも腕の筋肉で考えてください。使い続けると疲れて動かせなくなりますよね?でも力が入らないようぶらぶらさせて休ませるとまた力が入るようになります。では膀胱が休まるのはどんな状態でしょう?正解は膀胱からおしっこがすっかり出て縮んだ状態が膀胱にとっての休憩時間になります。

そのため残尿を放置しておくと膀胱に負担がかかる状態が続いてしまうのでさらに膀胱の機能が低下します。そして機能が低下すると残尿が増えてしまうという悪循環に陥ってしまいます。おしっこが膀胱内に溜まり続けた結果、膀胱内部の圧力が上昇します。その圧力は尿管という腎臓との間を結ぶ細い管に向かってしまうためおしっこが膀胱から腎臓に逆流するようになります。そうすると腎臓にも無用の圧力がかかり、また膀胱内の細菌が腎臓に感染を起こしやすくなるために腎臓の機能がどんどん落ちていき、最終的には腎後性腎不全と言われる末期の腎機能障害を起こしてしまい透析という一生涯続く治療を受けなくてはならなくなります。

診断

神経因性膀胱でも前立腺肥大症でもまずはおしっこの勢いを測ることができます。これにより自覚的には勢いが悪く見えても実際には年相応に十分出せていることがわかる方も多くおられます。

超音波検査で膀胱・男性であれば前立腺の状態を評価します。その時残尿を見るためにできれば排尿前後で観察をすることが勧められます。膀胱の変形や前立腺の腫大を評価します。

尿道から膀胱に細くて柔らかいチューブを挿入して膀胱の中の圧力を測定する検査は膀胱機能の精査に役立ちますが、尿道という敏感な部分に管を通すということで侵襲性が高いため、万人向けの検査ではありません。

対応

治療は原因に対応して行われます。

神経因性膀胱の場合、残尿がなければ薬の内服で「出しにくい」という症状が軽くできるかどうか試みます。前立腺肥大であれば自覚症状の改善効果をもたらす薬剤や前立腺そのものを縮小させるような薬剤を用いますが、薬物で十分な効果が得られない場合には手術によって前立腺を焼き縮めたり、削り取ったり、くり抜いたりします。

前立腺肥大の有無に関わらず膀胱の機能が著しく衰えており残尿が多いのであれば自分自身で出口から細くて柔らかい管をいれ、中に溜まっているおしっこを搾り出してくるという「自己導尿」を指導することもあります。1日のおしっこのでき方を計測しておき、何回・何時に導尿するという計画を立てます。そんな難しいことを!と言われるのですが、背筋を伸ばして座ることができる方で、両手の親指と人差し指が自由に動かせる方であれば原則、自己導尿は可能です。これまで多くの方に自己導尿指導を行なってきましたが最高齢は87歳の方で一度の指導で問題なく習慣づけることができました。

ここでは良性の疾患ばかりを述べましたが、同様の「だしにくい」という症状を起こす病気には前立腺や膀胱のがんも含まれます。確率は低いのですが、あっては困る病気ですから採血や検尿をおこなって検査を受けることをお勧めします。

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