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おしっこすると痛い

おしっこをする時に男性であればペニスの付近、女性であれば下腹部から股のあたりに痛みが走る。痛みの強さもなんとなく不快という程度からズキズキとする強い痛みまで様々で、常に痛み続けている場合もあれば、おしっこをし始めるときだけ、逆にし終わるときだけ痛むこともあります。

陰部という場所は敏感な部分です。しかし触れたか触れないかを鋭敏にキャッチできるという意味では確かに敏感なのですが、一体どこで痛みを感じているのかという場所の特定能力は意外に高くありません。つまり痛みを感じたところに必ずしも病気がある、というわけではないのがややこしいところです。

痛いという感覚は痛みを感じる物質が分泌されることで発生します。この痛みを感じる物質は自分の体が放出するもので、何か異常が起きている(細菌感染や怪我など)ことを意識させるための信号です。

ではどんな病気であれば痛みを感じるのでしょうか?

原因

性別によって原因のパターンが違います。

女性の場合

女性がおしっこをするときの痛みを訴えた場合、その大部分は膀胱の細菌感染、いわゆる膀胱炎が原因です。女性の体の構造上おしっこの出口・子供の出口・お通じの出口が前から後ろに並んでいます。おしっこの通り道は無菌ではありませんが、おしっこが定期的に流されているので通常は比較的キレイな状態です。子供の通り道とお通じの通り道にはもともと細菌が常在しています。とくにお通じの通り道にいる細菌は病原性(病気を起こす能力)の高いものが多く、女性の膀胱炎はたいていこの細菌によって発生します。
体の構造上細菌の移動を妨げられないため、生涯の間という範囲で見てみると女性の半分が膀胱炎を経験すると言われています。この罹患率の高さは前述の体の構造が大きく影響しているのですが、もう一つ影響力のある生活習慣があります。飲む水の量が少ないと膀胱炎を起こしやすくなるのです。今どうなっているのか分かりませんが、私が子供の頃は授業中トイレに行くのに先生にいちいち断りを入れなければなりませんでした。子供にとってトイレに行くというのは気恥ずかしいもので静かな授業中にそんなことを言い出すのはなかなか勇気のいることでした。ましてや当時の女子にとってはとても高いハードルだったでしょう。そうするとトイレを我慢するという生活習慣が身に付いてしまい、水を飲むのを控えるようになってしまうのです。今は自由にトイレに行けるようになっていると良いのですが・・・。来院される方に伺うと、1日に必要とされる水分量に達していないという方が多いのに驚きます。特に膀胱炎を起こしたときには洗い流すことが大切なので普段以上に飲む水分量を増やして欲しいのですが、長い年月をかけて身につけたこの生活習慣はなかなか変えるのが難しいようです。実際、膀胱炎を起こされた女性の5人に1人は半年以内に再発を経験されています。

男性の場合

男性の場合には膀胱炎は少ないとされています。体の構造上膀胱までの距離が長いため細菌の侵入が尿道あるいは前立腺で止まってしまうからです。そのため男性でおしっこの際の痛みを訴える方の多くは尿道炎や前立腺炎を原因とすることが多いのです。これらについても水をよく飲んで無理せず排尿している方には起こりにくいはずなのですが、男性の尿道炎・前立腺炎は性行為感染症の結果として発生することもあるため水を飲んでいれば良いというものでもないのが難しいところです。性行為感染症の原因となる微生物と通常の尿路感染症の原因微生物が異なるので治療薬を適切に選択するためには診察の際には病歴の慎重な聴取が重要になります。
膀胱炎で発熱することはごく稀なのですが、前立腺炎は基本的に発熱を伴います。ひどければ四十度に達することもあり、入院治療を必要とします(軽症であれば外来で治療可能です)。最近のCOVID-19(コロナウイルス)の流行により、発熱すると通常の外来ではなく発熱外来に行っていただくことになっていますが、いわゆる風邪の症状(せきやたん、鼻水など)が全くなく、排尿時に強い痛みを感じるという場合は急性前立腺炎の可能性が考えられるので泌尿器科に相談してみると良いでしょう。

性別を問わない原因

その他、性別を問わない原因として尿路結石により痛みを感じる方もおられます。とくに膀胱内や前立腺内を通る尿道に結石があることで刺激症状が発生します。尿道は1cm程度までひろがることができるので多くの場合ここまできた結石は自然に排泄されるのですが、結石の形によっては途中で引っかかってなかなか出てこないこともあります。また膀胱に結石が存在すると細菌が定着しやすくなってしまうため炎症による疼痛も加わることが多いのでそちらの治療も必要になってきます。

対策

微生物、特に細菌感染の治療は抗菌剤の投与となりますが、治療上の注意点があります。

  • 治療開始までに原因微生物の解析を始める
  • 原因微生物が解析されるまでの間、効果はあまり強力でなくても良いのでなるべく広い範囲(多くの種類の細菌)に効果のある薬剤を選んで投与する
  • 原因微生物が判明したら、効果の範囲はできるだけ狭く、強力な薬剤に切り替える
  • 投与期間は可能な限り短く、必要最低限にとどめる

これは耐性菌(特定の薬剤に対して抵抗性が高まってしまった細菌で難治性感染症の原因となりうる)のまん延を可能な限り予防しようというものです。乱用により多くの抗菌剤が実用性を失いました。すでに世界的に見れば全ての抗菌剤に抵抗性を持つ病原微生物が報告されています。高熱や激痛・臓器機能障害などを引き起こすほどの重篤な微生物感染の治療方法がなくならないように、軽症の感染症ほど抗菌剤の慎重な使用が求められるのです。

細かな話ですが、病原微生物にはいろいろな種類があります。「細菌」(いわゆるばい菌)はその種類と性質を調べるための検査方法が発達しており、どんな種類の細菌でどの抗菌剤が有効であるかがわかります。また「真菌」(いわゆるカビ)に対する検査方法も発達していますが、抗菌剤が効き切らない種類も多いのが困ったところです。一方で「ウィルス」は細菌や真菌とは全く違うもので、これらが自律的に増えていくのに対し、ウィルスは人間などの感染対象の正常な細胞機能を悪用して増えていきます。そのため増殖を抑えようとすると人間本体への影響(「副反応」とよばれるとばっちり)が大きくなってしまいます。また未知のウィルスもおおく、原因となるウィルスの解析も難しいことが多いです。

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