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おしっこの回数が多い

おしっこの回数は1日8回未満が正常、といわれていますが・・・

おしっこが近くなった、さっき行ったばかりなのにまたトイレに行きたくなったなどおしっこの回数にまつわる訴えも泌尿器科外来には多く寄せられます。
ここではおしっこの回数が多い・増えたという症状について説明していきます。

そもそもですがおしっこの回数に正常ってあるんでしょうか?
塩からい料理をたくさん食べた後はのどがかわいてたくさん水を飲んでしまいますよね?
逆に何かに集中している時は気づいたら最後にトイレに行ってから半日近く経っていたなんてこともあります。
でもそういったことで回数が増えた・減ったとしてクリニックに来られる方は見たことがありません。

いやいや時々ではなくほとんど毎日おしっこが近いんです、とおっしゃる方でもこのウェブページの別のところで説明する排尿日誌というおしっこの回数と量を記録してもらうという検査をしてみると上述の正常範囲に入っていたりすることもよくあります。
という訳でおしっこの正しい回数というものをここからここまで、と言い切るのはとても難しいことなんです。

ではおしっこの回数なんて気にしなければいいのかというとそれも違います。
はっきり言ってしまいましょう。
おしっこの回数で日常生活に支障が出る(簡単に言えば『困る』)ならばそれがあなたにとっての異常な回数なんです。
つまり1日15回おしっこに行きます、という方でも困っていなければ治療を受ける必要はないですし(まあ、他に変な病気がないかどうか調べておくことはお勧めしますが・・・)、1日の回数が7回の方でも困っているのであればそれを改善できないか色々試行錯誤してみます。
繰り返しますが困っているかどうか、がポイントです。

ではどんな状況なら困るのでしょう?
まず第一に『行きたくないタイミングで行きたくなる』ではないでしょうか?
重要な会議の最中とかバス旅行の途中なんかはおしっこに行きたくならないでくれ!と祈りたくなりますよね?
もっとありふれた状況で言えば寝ている間はおしっこのために起きたくはないものです。
こういうタイミングでおしっこに行きたくなると「おしっこの回数が多くて困る」ということになります。

一方で一日中1時間ごとにトイレに行きたくなるという方もおられます。
そうすると1日20回以上おしっこをしており、これは確かに日常生活が送れなくなりそうです。

実際に記録を取ってみて一応正常と言われる範囲に入る方でも困る方はおられます。
足が悪くてなるべく動きたくない・動けない方々ですね。回数が多い、というよりはトイレに行くのが大変という意味で困ることになります。
その他にもいろいろな状況は考えられますが、少なくともこの3つのシチュエーションはどれも『困る』理由が違います。
そうすると対応方法も違ってくるのです。

原因

前の項目で取り上げた3つの状況のうち、最後の体が動かない、に関しては神経・筋肉の問題が大きいため泌尿器科が中心になって対応するというよりは元々の病気をそれぞれの専門診療科での治療を受けていただきつつ、当方でも何かの手当てができないかを考えるというスタンスになるので、ここでは主に前の二つを起こすような原因について説明します。

まず、そもそも緊張感を感じると人間はおしっこをしたくなります。
これは反射(頭で考える前に起こる動作)であり病気ではありません。
そのためこの場合の尿意を消すことはできないのです。
ただ、程度の差こそあれ尿意を感じにくくするということはできます。

次に、おしっこがたくさんできればトイレに行く回数は増えざるを得ません。
同じ量であってもゆっくり貯まる場合と急にたくさんのおしっこができてきてしまう場合では尿意の感じ方に違いが出るようです。
たとえば常に朝食でコーヒーと牛乳と野菜ジュースを飲み、終わった後はお茶で口を整える、といった生活習慣を持っていれば日中のトイレの回数は多くなると思います。
この生活習慣が悪いことかと言えば、健康には良さそうな組み合わせですので、健康的な食生活かおしっこの回数かのトレードオフになりそうです。

何らかの理由でおしっこをためておく膀胱という袋がうまくひろがらないと十分におしっこがためられなくなるため尿の回数が増えます。
年を取るにつれて男性の半分近くは前立腺(精液の一部を作るところで膀胱の真下にくっついており、中に尿道が通っている)が自然に大きくなることでそのすぐ上の膀胱を圧迫して広がりを悪くします。
この問題は薬による治療や手術での改善が期待できます。

一方、病気で膀胱のおしっこをためる能力が低下している方もおられます。
たとえば膀胱の筋肉と神経の働きが悪くなってしまう神経因性膀胱という病気は脳梗塞やパーキンソン病など、もしくは背骨の怪我や狭窄などの変形によって脳から続く脊髄という神経がダメージを受けることで発生します。
脳や脊髄などの太い神経だけではなく、もっと末梢の神経がたとえば糖尿病や慢性の血流障害などによってダメージを受けても膀胱の機能は低下します。

また膀胱炎前立腺炎といったおしっこの通り道への細菌などの微生物の感染によって尿意が刺激されたことでおしっこの回数が増えます。
感染による回数の増加は比較的急激に発症してくるという特徴があります。起こりやすさでいうと膀胱に結石(おしっこの中の成分が結晶化して石のように硬くなったもの)ができてしまうと、これが膀胱の壁を刺激してしまい、おしっこの回数が増えることになります。
感染症や結石による頻尿にはおしっこをする際に痛みを伴うことが多いという特徴があります。

発生する確率としては極々低いものですが膀胱がん前立腺がんなどでも頻尿になることがあるので、たかがおしっこの回数、とあなどらずに一度検査を受けてみてください。

調べ方

まずは自分が感じている症状が回数の増加だけなのか、それとも他の症状(もれあるいは出しにくさや痛みなど)も伴っているのかを問診票を使って調べていきます。
この問診票にはいろいろな種類があるのですが、当院ではCore Lower urinary tract Symptom Score (CLSS)質問票を用いています。
これは発生する確率が高い症状を上から順に10個調べていくという方法で、抜け落ちのない自覚症状の聴取ができるようになっています。

その上でおしっこの検査や超音波検査に移るわけですが、タイミングがうまくあえばおしっこがたまっている状態の膀胱を超音波検査で観察することで、膀胱の広がり具合や何か刺激になっているもの(結石やがんなど)が無いかをみます。
その後おしっこを調べて出血や感染の兆候をみます。
これらは来院された時におしっこがうまくたまっていればすぐにできて結果が出る検査です。
ですがこれらはあくまでもその時一回だけの状態を見ているもので、ふだんの排尿の状態を代表しているとは限りません。
そこで行われるのが排尿日誌の作成です。
これは朝起きた時から丸一日、翌朝起きた時までのおしっこの時刻と量を記録してもらうというものです。
これを3日間(できれば連続で、と言われていますが実際には飛び飛びになることが多いです)付けていただくことで、(1) その方が普段どの程度までおしっこをためられているのか、(2) 1日にどのくらいのおしっこをつくっているのかを見てとることができます。
ふだんの状態(検査のために無理に作り出した状態ではない)を知ることができる唯一の方法ですので、面倒くさがらずに記録していただけると診断の精度を上げることができます。

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