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夜おしっこのためにおきてしまう

夜はしっかりと寝て朝すっきりと目覚める。誰もが望む姿です。しかし50歳を超えた頃からこれが意外に難しいことであると気づきます。

「寝ている間におしっこに行きたくなる。でも眠い。なんとかこのまま朝まで粘れないか。でもますます下っ腹が苦しくなって目が覚めてきた。はぁ、しょうがない、起きてトイレに行ってくるか・・・」あるいは「寝ていて急におしっこがしたくなり、慌ててトイレに行こうとしたが間に合わず、途中で漏らしてしまった・・・」なんて経験はありませんか?

夜寝ている間におしっこに起きなければならない(夜間頻尿)というのは実に健康に悪いということが明らかにされています。起きてしまうことそのものも睡眠不足を招き体調を狂わせるのですが、そもそも寝ている間におしっこに起きなければならないような状態に陥る原因そのものにも健康への悪影響を及ぼすような疾患が多く含まれています。研究報告では寝ている間のおしっこの回数が多い人と少ない人を比べて経過を見たところ多い人は少ない人より死亡するリスクが高かった!なんてショッキングな結論が複数の論文において報告されています。夜間頻尿は決して侮ってはいけない状態なのです。

原因

大きく分けて3つに分かれます。

  1. 年齢と共に膀胱に溜められるおしっこの量が減ってくる(膀胱の伸びが悪くなる)
  2. 年齢と共に寝ている間にできるおしっこの量が増えてくる
  3. 年齢と共に眠りが浅くなる

このいずれもが夜間頻尿のリスクを上げているのです、

①膀胱が硬くなるという現象については別の項目(「切迫した感じがある」)で述べていますのでそちらをご覧ください。

②寝ている間にできるおしっこの量については、本来人間の体にある時計(生体時計)が夜寝ている間に抗利尿ホルモンとよばれる物質を血液中に出させることで、おしっこを作らせないようにしています。しかしこの生体時計のネジが50歳ごろから緩んでしまうとこのホルモンの夜間の分泌がなくなってしまうため、おしっこができ続けてしまうのです。できたおしっこは出すか漏らすかしか逃げ道はないため、体を起こしてトイレに行かせているのであれば実は膀胱は何にも悪いことはしていないのです。

③眠りの深さ、浅さについては高校生の頃蹴飛ばされても起きなかったあの頃の眠りの深さは残念ながら戻ってきません。年齢と共に眠りは浅くなる傾向にあります。疲れていて眠りが深い時は思ったより長い時間眠れた、なんていう経験がある方も多いと思います。眠りが浅いとちょっとした尿意でも起きてしまうのですが、眠りが深ければその分起きにくくなります。ただ、あまり我慢しすぎてしまうと今度はもれてしまうことになるので一概に疲れれば良いというものではないのが難しいところです。

診断

まず併存疾患の聴取が大切です。例えば高血圧。ありふれた病気ですが夜間の尿生成量を増加させるとされています。例えば睡眠時無呼吸症候群。いびきの間隔があくことで気づかれることが多い病気ですが、夜間の尿量をてきめんに増やすことが知られています。それらへ依存疾患の治療のために処方されている薬剤の副作用にも「多尿」を起こすものが数多くあります。気になる方は処方を受けている薬局で問い合わせてみてください。

ここでも排尿日誌が縦横無尽の働きをします。まず尿の生成量が分かります。そして就寝時刻と起床時刻の記載から夜間にできるおしっこの割合(「夜間多尿指数」といいます)を算出できます。これにより夜間のホルモン分泌の乱れが推測できます。また一回一回の排尿量が分かるので普段の膀胱の容量も推定できます。尿失禁についても記載していただければどんな時に漏れてしまうのかというタイミングの解析にも役に立ちます。24時間の排尿の時刻と量を記録しなければならないので(しかも3日間)面倒な検査ではあるのですが、上記のように非常に多くのデータが得られて正確な診断に役立ちますので頑張って記録をつけてみてください。

超音波検査で前立腺の肥大や膀胱壁の異常などを観察すると共に、おしっこの検査を行って感染や出血など蓄尿障害(おしっこをうまく溜めておけない状態)を起こす病気の兆候がないかを見ます。

眠りについても評価しておくことが大切です。夜間頻尿の原因として眠りが浅くなっていることを挙げましたが、夜間頻尿で眠りが中断されてしまい睡眠障害を生じることもまた事実です。そうすると治療することで眠りが改善されるかという点も治療の効果を判断する上で重要なポイントになります。

睡眠障害には入眠障害・中途&早期覚醒・総睡眠時間・睡眠の質・日中への影響など様々な側面があり、これらをまとめて日本語では「眠れない・眠りが浅い」と表現してしまうので注意深い問診が必要です。これに対しても国際的に認められた問診票がいくつか知られていますが、当院ではアテネ睡眠障害質問票(Athons Insomnia Scaleを用いて総合的な睡眠の評価を行っています。

対策

前立腺肥大や神経因性膀胱についての薬物治療は別項目(「排尿蓄尿障害」)を参照していただくとして、ここでは夜間頻尿を改善するための生活指導について説明します。

通常飲んだ水分がおしっこになって排泄されるまでには4時間から6時間程度かかると言われています。そのため入眠前の4〜6時間に飲んだ水分は就寝中におしっこになって膀胱にためられることになります。この量が多くなれば当然途中でためられる量の限界を超えてしまいますので寝ている間におしっこに行かなければならなくなります。寝ている間に脱水になると血流障害を起こしやすくなるという報告もありますので、入眠前に全く引水しない、というのはやめていただきたいのですが、過剰な飲水はさけていただくことをお勧めしています。寝ている間にトイレに立った時、喉が乾くので水を飲む習慣をお持ちの方もおられますが、水を飲むことによって反射的に尿意を起こす場合もあるのでやはりこの時も量は控えめにしていただきたいと思います。

また飲む水分の種類ですが、カフェインが含まれていると膀胱への直接的な刺激作用があるため尿を溜めにくくなります。夕食後のコーヒータイムを大切にされている方も多いと思いますが、睡眠をとるか、コーヒーによるリラックス効果をとるかのトレードオフになると思います。今日はコーヒーを飲みたい気分だという日もあれば、よく寝たいと思う日もあると思います。その日の気分で選んでいただければと思います。

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