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泌尿生殖器がん

泌尿器科で診療するがんには体の上から順に副腎がん・腎臓がん・腎盂尿管がん・膀胱がん・前立腺がん・精巣がんがあります。
おなじ「がん」でもできてくる場所によって全く違う性質を持っており、当然のごとく診断方法・治療方法も違ってきます。
ではそれぞれのがんについて簡単に説明していきましょう。

副腎がん

発生率は100万人に2人位と非常に稀ながんです。
副腎という臓器はさまざまなホルモンと呼ばれる物質を血液中に分泌している小さな臓器で、腎臓の頭側に載っています。
ここにできる腫瘍の9割は良性と言われており、悪性は少ないといわれています。
もともとホルモンを分泌している細胞が腫瘍になった場合その性質を引き継ぎ、血圧や血糖値のコントロールがひどく難しくなることがありますが、ほとんどの場合無症状で、健康診断や他の病気のための画像検査で偶然に発見されることが多いです。

診断の基本は画像検査(CTやMRI)ですが、ホルモンを分泌していると疑われる場合には採血によるホルモンの測定とシンチグラムという画像検査が追加で行われます。

治療の基本は手術です。
完全切除できれば完治も期待できます。
転移してしまった場合、化学療法が使われますが長期生存は難しい状態です。

腎臓がん

我が国では年間に約1万人の方が新たに腎臓がんと診断されています。
現在では7割近くが健診などの画像検査で偶然に発見される初期癌として発見されます。
腎臓がんの3%程度は遺伝性に発症していると考えられています。

診断は腎臓の機能が許せば造影剤を使用したダイナミックCTという検査が選ばれます。
腎機能が低下するなど造影剤使用困難な場合にはドップラー超音波検査とMRIが併用されます。
血液検査や尿検査で腎臓がんを見つけられるようなマーカーと呼ばれる物質は現時点ではありません。
発見時に既に転移している可能性があるのでCTは腎臓だけでなく胸部~骨盤部まで撮影します。
比較的大きめの腫瘍の場合、骨に転移していることがあるので全身の骨を一気に調べる骨シンチグラムが行われます。

治療の原則は手術による切除です。
腎臓に留まっている状態であれば7割以上の確率で治癒が期待できます。
転移を生じた場合には採血結果などをもとに予後予測が行われ、適切な組み合わせを選んで薬物療法がおこなわれます。
この10年余りで分子標的薬及び免疫チェックポイント阻害薬が開発され、確率は低い(10%程度)のですが完治にいたる症例がみられるようになり、また50%生存期間も3年を超えるようになりました。

腎盂尿管がん

おしっこをつくる腎臓とおしっこを貯める膀胱の間をつなぐ腎盂・尿管にできるがんです。
腫瘍細胞の性質は次の膀胱がんと似ていますが、膀胱よりも腎盂・尿管のほうが予後は不良の場合が多いです。

診断はおしっこの中にがん細胞が混ざっていないかをみる尿細胞診で疑いをつけ、造影剤を使用したレントゲン撮影で診断していましたが、近年の内視鏡の進歩に伴い、腫瘍を直接見て組織を採取することで確定診断とすることが増えてきました。
高率に膀胱がんを伴うので膀胱の内視鏡検査も併せて行います。
腎臓がん同様遠隔転移の精査のための画像検査も必要です。

治療の原則は手術による切除であり、完全切除し得た場合5年生存率は7割を超えます。
しかし転移を認めた場合、抗がん剤を用いた化学療法や免疫チェックポイント阻害薬の投与が行われますが、5年生存率は2~3割程度に止まります。

膀胱がん

膀胱にできるがんで血尿をきっかけに見つかることが多いです。
目に見える血尿だけではなく、健康診断などで指摘される尿潜血も発見のきっかけになりますので、このページを読んでおられる皆さんもぜひ尿潜血を調べる健康診断を受けていただきたいと思います。
人口10万人あたりの罹患率は20人弱です。

診断は腎盂尿管がんと同様尿細胞診と膀胱鏡で診断されますが、膀胱の壁のどこまで癌が食い込んでいるのかを見るためにはMRIが用いられます。
転移が疑われる場合には胸部~骨盤部までのCTと骨シンチグラムを行います。

この癌は膀胱の表面だけにとどまるもの(表在型)と膀胱の筋肉の壁に食い込むもの(筋層浸潤型)に分かれます。
表在型は基本的に予後がよく、再発はしますがほとんどの方は内視鏡下で癌を削り取る手術(TURBTといいます)で制御が可能です。
しかし筋層浸潤型は膀胱壁外への進展や転移などを起こしやすく、化学療法(抗がん剤や免疫チェックポイント阻害剤)を前後に挟みながら膀胱を全て切除し、おしっこの通り道を作り直す手術を行なってもなお5年生存率は5割、転移が出現してしまうと3割を切ってしまいます。

前立腺がん

男性に発生する最も多いがんで、人口10万人あたり150人弱が罹患すると言われています。
全体的な5年生存率は99%であり、発見されてすぐに命に関わることは少ないと言えるでしょう。

なぜこんなに治療成績が良いのでしょう?
その理由の一つはPSAと呼ばれる血液マーカー(非常に鋭敏で、自覚症状のない時期でもがんを見つけるのに役立つ)をもちいた検診システムがつくられたことで早期診断・早期治療が行われるようになったことです。
またこのがんは男性ホルモンによって進行するのですが、男性ホルモンの作用を阻害したり、男性ホルモンの分泌自体を抑制したりする薬剤が効果的で、転移がある場合でも5年生存率が50%を超えます。

診断は上述のPSA測定で疑いを持たれたら針生検(陰嚢と肛門の間から組織採取用の針を刺して前立腺にがん細胞が混ざっているかを調べる)によって確定診断をつけます。
この時癌の性質の悪さ(グリーソンスコアという表記方法で表します)も判定し、予後の予測に役立てます。
がんが見つかった場合、他の癌と同じくCTやMRI・骨シンチグラムで転移の有無を精査します。

治療ですが予後良好と判断された場合には無治療経過観察となることもありえますが、通常は遠隔転移がなければ手術あるいは放射線照射により完治を目指す方が多いです。
手術はダ・ビンチとよばれるロボットを用いた内視鏡手術が行われます。
放射線治療は進行度などをもとに小線源療法、強度変調放射線療法あるいは重粒子線治療が選択されます。
いずれの治療方法も技術の進歩により合併症は減っていますが、出血や感染症の他におしっこが我慢しづらくなった、出しにくくなった、痛みが出るなどの症状が残ることがあります。

精巣がん

全体的には頻度の低いのですが、若年男性に限ると発生率第一位のがんです。
精巣(いわゆる睾丸)が腫れてきますが痛みはないことが多いです。
相談しにくいことなのか、かなり進行してから受診される方も多いのが特徴です。
血液マーカー(LDHやHCG, AFP)を測定することで病気の進行状況を評価できる方もおられます。

診断は精巣を摘出してがん細胞の有無を調べます。
同時に転移の検索をCTで行います。
これもまた予後分類を行なうことで治療方針が決まるのですが、基本的に転移がなければ手術のみで経過を見ますが、ハイリスクの場合予防的に抗がん剤を短期間投与します。
転移がある場合は抗がん剤を複数組み合わせて投与しますが、固形腫瘍(血液以外の癌)では珍しく完治することが稀ではありません。
ですが進行するほど予後が悪くなるのは事実なので恥ずかしがらずに気づいたらすぐに泌尿器科を受診していただきたいと思います。

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