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健康診断・人間ドックでひっかかった

ばく然としたタイトルですが、自覚症状なんてないのに健康診断を受けたら要受診・要治療といわれてしまった!という方たちに向けた内容です。

分類と原因、診断のための検査方法

泌尿器科に行きなさい、と言われてしまうのには次の様な項目が考えられます。

1. おしっこの検査(尿一般検査や尿沈渣)の問題

a. おしっこに血が混ざってますよ(尿潜血陽性もしくは尿中赤血球が5個/1視野以上)

おしっこの色が違う」の項目をご覧ください。

b. おしっこに蛋白が出てますよ(尿蛋白陽性)

腎ぞうの機能障害が起きているあるいはこれから起きる可能性がある、ということを意味します。
腎ぞうの機能が落ちる原因は大まかに分けると、

  1. 腎ぞうに送られてくる血液がうまく入ってこない
  2. 腎ぞうそのものが傷んでいる
  3. 腎ぞうでできたおしっこがうまく流れていかない

に分けられます

このうち①と②は腎臓内科という診療科が得意とする領域で、泌尿器科はおもに③についての診察をします。
おしっこの流れが悪くなる原因は尿路結石の確率が圧倒的に高いのですが、その他に腎盂尿管がんのような悪性腫瘍も原因となりえます。
時には膀胱がんが尿管の膀胱への出口付近を塞いでしまっていることもあります。

同じ悪性腫瘍でもおしっこの通り道そのものではなく、他の臓器にできたもの(消化器の癌の腹膜は種や卵巣がんなど)が尿管を圧迫していたなんてこともあります。
これらは画像検査で調べる必要がありますが、詳細については結石については「尿路結石症」の項目を、悪性腫瘍については「泌尿生殖器がん」の項目を参照してください。

c. おしっこが汚れてますよ(尿白血球反応陽性もしくは尿中白血球が5個/1視野以上)

おしっこの通り道もしくはその周りの前立腺などに病原微生物(ばい菌やかび、ウィルスなど)の感染が起きている可能性があると考えます。
可能ならばおしっこを培養(中にいる微生物を育てて増やし、正体を見極める検査)して、薬物による治療をすべきかどうかを考えます。
おしっこをすると痛い」の項目を参照してみてください。

d. おしっこに怪しい細胞(がん細胞?)が混ざってますよ。(尿細胞診陽性)

よほどお値段がはるドックでしか調べてないと思います。
内容はもうそのままで、おしっこの通り道にできる癌の細胞がおしっこに混ざって出てきている様に見えるということです。
腎盂尿管がん・膀胱がんの可能性があるので検査を受けてください。
詳細は「泌尿生殖器がん」の中の上述の癌の項目を参照してください。

2. 腹部超音波検査の問題

a. 腎ぞうに石がありそうです。(腎結石疑い)

ある、と言い切る強気の検査会社もいます。
尿路結石症」の項目を参照してください

b. 腎ぞうに水がたまってますよ。(腎のう胞もしくは水腎症)

これにはたいていは加齢によって生じる「腎のう胞」と、あきらかにおしっこが流れにくくなってますよという「水腎症」の両方が含まれます。
「腎のう胞」は基本的に良性で処置対象ではないのですが、年と共に育つことがあります。
あまり大きくなってしまうとお腹の中から圧迫感を感じて不快なので、注射針を刺して内容液を吸い出し、中にエタノールなど組織に炎症を起こして癒着させる物質を注入することもあります。
またごく稀ですが、「のう胞性腎がん」とよばれるのう胞の壁から腎がんが生えてくる病気がおこりえますので、定期的なチェックは受けておいた方が良いでしょう。
「水腎症」は1-bで述べたおしっこの流れが悪くなっているということを医学的に言い直しただけですので、そちらの項目を参照してください。

c. 腎臓におできができてますよ。(腎腫瘍疑い)

超音波で見てみたら腎臓の形が変形し、かたまりができている様にみえるということです。
変形の理由としては

  1. 何度も腎盂腎炎を繰り返して一部が固く縮んでしまったとか、
  2. 元々生まれつきそんな形をしている(おしっこの通り道の先天的な変形で、腎盂や尿管が2つあるという病気があり、超音波で腎臓の変形があることで気づくことがあります)ということもありますが、
  3. おでき(医学的にいうと腫瘍)が腎臓から生えてきている可能性が高いと考えられる状態です。

腫瘍には良性悪性ありますが、血管筋脂肪腫とよばれるタイプの良性腫瘍は1cm以下の小さいうちに見つかることが多いのに対し、腎がんなどは周りの正常な腎組織と見え方が似通っており、ある程度育って輪郭が変わって初めて見つかるということも多いです。
ですので毎年できれば同じところで検診を受けて昨年の結果と比較してもらえると発見しやすいかと思います。
*検診・ドックでは膀胱や前立腺はなかなか見てくれません。とほほ

3. 採血結果の問題

a. PSA(ピーエスエー:前立腺特異抗原)が高いですよ。(前立腺がんの疑い)

その名の通り前立腺で作られて血液中に出荷されている物質を測定することで自覚症状が出るよりもはるかに早く前立腺がんを見付けようとする検査です。
4.0 ng/ml(ナノグラム・パー・ミリリットルと読みます)が正常上限で、これを超える、あるいは毎年測定していて年々これに近づいていくと精密検査を受けなさいと言われることになります。
この場合の精密検査とは前立腺に組織採取用の針を刺してがんがあるかないかを見るという、なかなかに体へのダメージがありそうな検査を意味します。
まあ4.0を越えた途端にみんなこれを受けていたら時間も費用も大変なことになります。
そこで4.0~9.9までの区間を「グレー・ゾーン」と呼び、このくらいの値であればがんが見つかる確率は見つからない確率よりも低いのでMRIで前立腺内部を観察してがんがないかどうか予測したり、経過観察といって数ヶ月ごとに採血を繰り返してPSAの値が上昇してこないかどうかをみてから針生検の適応を考えるという戦略もしばしば用いられます。

ただやはりがんが心配だからさっさと白黒つけてほしい、という方には4.0程度でも針生検を受けていただくことはあります。
針生検は1度で全て白黒がつくというものではなく、数回繰り返してようやくがんが見つかったなどということもしばしば経験します。

b. クレアチニンもしくは尿素窒素(BUN:ビーユーエヌ)が高いですよ。(腎ぞう機能障害)

1-b. おしっこに蛋白が出てますよ(尿蛋白陽性)とほぼ同じ意味ですが、いずれにせよ、検診・ドックで上記の項目の異常を指摘されたら泌尿器科を受診して納得できるまで色々と聞き倒してください。

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